「ずらし」が生んだ豊かな空間[ENH]

水戸市内に完成した新築住宅です。

家づくりにあたってEさまから出されたご希望はいくつかあったのですが、その中で、空間構成に大きく影響するものがありました。 それは、「駐車スペースを3台分確保してほしい。そして、うち1台分はガレージ(家屋と一体化した車庫)にしてほしい」というものです。

Eさまの住宅のデザインは、土地の持つ条件の中で、どうしたらこのご要望を最善の形で実現できるか、それを考えていく作業から始まりました。

●「2つのボックスずらし案」ですべてがよい方向に。

Eさま邸の敷地は、住宅団地の中にあります。 東側はメインストリートに面していて、西側にも細い生活道路が走る、東西を道路にはさまれた四角形の土地です。 車は西側の道路からのみ出入りが可能で、土地自体は道路より60センチほど高くなっています。

ふつうに考えると、四角形の土地の北側半分に建物を建て、南側半分を庭や駐車スペースにするというイメージが浮かぶと思いますが、もう少し工夫ができないかと考えを巡らせているうちに、家を2つのボックスに分けて考え、南北に大きくずらして配置する案を思いつきました。

まず四角い土地の北側半分に単純な立方体の家がある状態をイメージしてみてください。 そのうちの東側半分に、ガレージスペースとLDKを配置します。 残りの西側半分は2階建てとして、1階には主寝室、来客用の和室、洗面・トイレ・浴室を、2階にはロフト付きの子ども部屋2つとトイレを設けます。

その西側の半分、2階建ての「ボックス」を南側にずらして配置してみます。 そうすると採光や通風、また外観のイメージについても大きなメリットが得られることがわかりました。

初回の打ち合わせでさっそくこのずらし案をEさまに「叩き台」としてご提案しました。 その後、ほかにもいろいろな案を作成して打ち合わせを重ねていったのですが、結果的に最初の案がいちばん良いということになり、この「2つのボックスずらし案」で計画を進めることになりました。

●無垢材と珪藻土を使用した体に優しい室内環境

内部の構成はシンプルになるよう心がけ、素材はEさまのご希望もあって、できる限り自然素材を使用しています。

玄関を入ると、気持ちのいい吹き抜け空間が目に飛び込みます。 床は天然の無垢材(合板や集成材ではなく丸太からその形に切り出した木材)を使用し、居室の壁にはすべて珪藻土を用いました。 無垢材も珪藻土も自然素材のため化学物質を室内に放出することがなく、どちらも湿度調整の機能を持っているため、体調の維持管理にとてもよいと言われています。 Eさまも、「新築にもかかわらず室内に化学物質特有の嫌な匂いがまったくしない」ととても喜こんでいらっしゃいました。もちろん、価格はそれなりにする素材ですが、やはり使用する価値はあるのだとEさまの喜びの声を聞いてあらためて実感しました。

LDKの吹き抜け空間には太い梁が3本通っていますが、床の無垢材に合わせた明るい色調の木材を選んでいるため、とても軽やかな印象です。

階段や子ども部屋も含めて、基本的には家全体の内装をこの明るい木材の色調で統一しています。 唯一、2階にある部屋のうち、1部屋だけはモノトーンのイメージでとのご希望があり、濃い色の木材を使用しました。 この部屋はコントラストを際立たせるために、壁の色も他の居室の色より一段白色度の高い白を採用しています。

●「ずらし」が可能にしたたくさんの窓

Eさま邸の最大の特徴を挙げるとすると、それは開口部、すなわち窓の多さということになると思います。 15畳あるLDKには、じつにたくさんの窓があります。 まず、玄関を入ってちょうど正面になる角度の壁面に、四角いピクチャーウインドウ(庭の景色を絵画のように室内に取り込むための窓)を設え、玄関を入ると中庭の緑がすぐに視界に入る工夫をしました。

LDKの南面には壁一面の大開口を設け、さらにその上部の吹き抜けにも大きな窓を配置。加えて他の3つの壁面にもそれぞれに窓を設けました。 このたくさんの窓のお陰で、LDKは四季を通じて採光と通風に恵まれたとても快適な空間となっています。

2階も同様に、2つの壁面とロフトに合わせて3つの窓をそれぞれの部屋に設けました。

これらの窓の多くは、「2つのボックスをずらす」ことで壁面が増えて設置が可能となったものです。 Eさま邸は隣家と近接しているのですが、どの窓も向きと大きさを考えて設えているため、眺めがとてもよく、晴れた日には庭の緑だけでなく、青空も存分に屋内に「取り込む」ことができます。

また外観も「ずらし」の効果で、どの角度から見ても適度なボリューム感を感じさせる表情豊かな建築物となりました。

こうしてEさまの長年の夢だった「長く満足して住める、自分たちの家」が完成しました。 夢の実現のためにエイプラス・デザインを選んでくださったEさまの想いに、今回は土地の特性を生かした最善・最上のプランでお応えすることができたのではないかなと、私自身もうれしい思いでいます。


「家」ギャラリーに戻る
建設地 茨城県水戸市
構造 木造 2階建て
敷地面積
延床面積 127.48㎡
竣工 2016年10月
業務内容 新築設計監理
担当 鈴木崇也